風が涼しくなって秋めいてきましたね。
今回は、秋を感じてふと思い出した父との最後のドライブについて書きたいと思います。
3年前の10月のはじめ、私は翌月に結婚式を控えていました。
結婚式の準備のため、実家に帰っていて、翌朝は実家から職場に出勤することに。
実家で朝食を摂っていると、父から「職場まで車で送っていくよ」と言われました。
職場までは電車で数駅で、むしろ電車の方が近く、”父はなぜそんなことを言い出すのか?”と思いながら一度断った私。
でも”父が職場まで送ってくれるなんて、もう2度とないかもしれない”と思い直し、「やっぱり送ってもらおうかな?」とお願いしたのでした。
なんだかよくわからない私のカンは最悪な形で的中し、それが父と2人での最後のドライブとなりました。
結婚式の翌々日、父は朝起きて来ず、天国へと旅立ってしまったのです。
大酒飲みの大食漢で、要因はいくつか考えられるとはいえ、60歳で日本各地を飛び回り、誰よりも元気な人だったので、3年経った今もどこかで生きている気持ちが拭えません。
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そして自分が人の親になってから、あの朝のドライブを親目線で思い返すようになりました。それは、娘と一緒に過ごす時間、話をする時間には限りがあるということです。
父は何気なく私を送ろうと思ったのかもしれませんし、結婚するからもうこんな風に娘を車で送り出す機会はないと思ったのかもしれません。
どちらにしても人生には限りがあって、大事な人と過ごせる時間には限りがあるので、あの時父が私と過ごしたいと思ってくれたことを嬉しく思います。
そして、父とあの時話したことは本当に他愛無いことでした。最近の政治の話とか、翌月に予定していた結婚式の準備の話をしたんだと記憶しています。
そして仕事の時間より少し早く到着したので、近くのコンビニでコーヒーを買って数分話をしてから、父は目的地へと去っていきました。
父にとってはなんの気無しに私を車で送ろうとしたのかもしれませんが、結果的には一緒に過ごしたかけがえのない思い出になりました。
そしてずっと後悔していることがあります。あの時、淹れたてのセブンコーヒーじゃなくてペットボトルのコーヒーを買ったこと。
運転しながらだったら飲みやすいかなと思って、ペットボトルのコーヒーを買ったのでした。
くだらないことなのですが、最後に買ってあげるコーヒーだとわかっていたなら、もっと香りの良い淹れたてのコーヒーを買ってあげればよかった…
でも一つ思うのは、あの時送ってもらおうと思い直してよかったということです。もし断っていたら、もっと後悔していたことでしょう。
一度断っておきながら、もう一度お願いするのは照れ臭くて数分悩みました。でも結果的にお願いしてよかったと心の底から思っています。
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生きていると選択の連続だと思います。
このできごとを通して、どっちにしようと悩んだら、人生には限りがあること、思い返した時に後悔しない選択であることを意識して選びたいと思うようになりました。
そして娘と過ごす今も限りがあります。
焦りそうにもなりますが、長生きすることを目指してのんびりと、一緒に過ごせる今を大事に過ごしたいと思います。
父はもういないけど、最近は鏡の中に父の面影を感じて、自分が遺伝子をしっかり引き継いでいるのだと思う今日この頃です。
ここに父がいると思うようになり、徐々に涙も出なくなりました。
時間には限りがあるから、今しかできないことを悔いなくやって生きたい。父が気づかせてくれた大切な教えです。
そして、父が生きたかったであろう人生の続きも一緒に生きるような気持ちで、全力で生きていきたいです。
秋の風を感じたら、父とのラストドライブを思い出したいと思います。